第2章 同業者/夢主は元お客様
それを見て少し安心する。
感情と言えるものが一応は残っているならばまだまだ必死に稼いではくれるだろう。
女の価値はどこなのか。
ヒソカの言う“いかに金を捻出出来る素質があるか”。
これには前提条件がいる。
何故なら 物事の匙加減の見極めが出来ぬ頭の悪い女はこのように無価値に転落してしまう。こうなってくると余計な手間を増やす害にしかならない。
本件はイルミにとって、過去に例を見ない大失敗でしかなかった。
餌やりを終えるとすぐに立ち上がり踵を返す。後ろから 掠れた声がした。
「…イルミ…」
「なに」
「全部終わったら、…私、どうなるの?」
「自由、じゃない?」
「違う。もう、…イルミに会えないの?」
静かに振り返ると 白い顔を醜く歪める女と目があった。
「……やだ……もう会えないの?もう来てくれないの?お客さんとしてならまた会いに行ってもいい?イルミがいなきゃ私、」
「学習したら」
「え」
「失敗って繰り返すモンじゃない。お互いにね」
「…失敗…?…」
「うん」
壊れかかったこの女に 何が失敗なのか理解出来ているのかはわからないが。射るような黒い目を向けながら イルミは声を響かせる。
「とりあえずはそんな先の事よりさ、次またオレに会うことを考えてよ」
「……うん……」
このペースなら悪くはない、ここへ来るのもあと少しの辛抱だ。頭で納期を試算しながら 部屋を出た。