第2章 同業者/夢主は元お客様
黒が解かれると、白いシャツが面積を増す。
女は少しだけ顔を起こし イルミのスマートな身体のラインに魅入る、黒いベルトにきっちり入れられたシャツを満足気に見つめた。
華奢な片手を腹部に這わせ、ゆっくり下へ滑らせてゆく。ベルト中心に位置するシルバーのバックルを指の腹でくるくる撫でながら 甘い声を出した。
「……シたい?」
「クタクタじゃなかったの?」
「イルミとするのは別」
「いい。ヌいてきたから」
「嘘」
雑に会話をしていると それを指摘するかの如く 女にキッパリそう言われた。女は冷たい掌をシャツとズボンの間に少しだけ滑り込ませてくる。
「シャツに余計なシワがないもん。今日はベルト外してないんでしょ?」
「よくわかったね。でも今日はそういう気分じゃないし勃たないかも」
「……私、プロだよ」
嗜めるような顔つきで言った後、女はその軽そうな身体をふわっと起こして腹部に乗っかってくる。
短いスカートから覗く柔らかな太ももが脇腹を甘く締め付ける。肩が見えそうな程襟元のゆるい服は 鎖骨が作る深いくぼみをあらわにしているのに、下着や胸の谷間は見えそうで見えないのだからつい視線を奪われる。
仕事柄女は見慣れている。そんなイルミから見ても この女はお世辞抜きに可愛らしい方だと思う。醸し出す雰囲気も話し方もふとした仕草も、つまりは男の目を引く。
女が 伸びた脚を片方立てれば そこからは下着が覗く。次はそこに目が行くのは当然で、女は見せつけるように 自身の商売道具を下半身の真ん中に押し付けてくる。行為を誘致するべく 切なげな顔をする。
すでにダラダラ濡れている女の箇所へ目が吸い寄せられた。本番行為を目的としているソープであれば 泡姫が膣内にローションを仕込んでいるのは常識であるし 一日中そんな仕事をしているのだからまだ中に残っているのだろう。
細い両手がベルトに伸びてくる。視線を戻し 女の顔を伺えば、相変わらず可愛らしく笑っている。
何がおかしいのか。
こちらに余計な手間を与え、当然の役務を強いたら勝手に精神を壊し、今では我が物顔で自身の上に跨っている。
イルミは女の服の胸元に手を伸ばす、先程の作業の名残でそこは少し汚れていた。構わずそこを雑に掴み 冷たい声で言った。