第5章 square/夢主2人/キャバ嬢/裏
「戻ってこないね リオン」
「そうだね」
「何してるのかな」
「普通に考えてヤってるんじゃない?」
導いた解答は同等だった。
イルミが俄かに頭をズラせば 黒髪の間から少しだけ顔が出てくる。横顔だけを見下ろしていると 大きな瞳が可愛くて女性らしくすら見える。頬にかかる髪を整えながら、ふとした疑問を投げてみた。
「………リオンとエッチした?」
「してないよ。金品要求されたり彼女面されても面倒だし」
「どうかな、ただ単にイルミのこと気に入ってるだけだと思うけどね」
「でも、その点ルナはいいな」
イルミは真上を向いてくる。変化のない表情がはっきり見えた。
「抱いても100億積んでも、自惚れたり面倒な事言ったりしなそうで」
「都合が良さそうってこと?」
「持ちつ持たれつなんだから一定の距離は必要だろ?仕事が出来る女だなって褒めたつもりなんだけど」
「………そ。ありがと」
素っ気なくそう言い、深くまばたきをした。
ルナが黙るとまたすぐに静寂だ。浴室からは一切の物音すらしないのが逆に不自然だった。
中で起きている事を想像してみる。イルミイルミ言っておきながらヒソカと引きこもるリオンも、あっさりリオンに手を出すヒソカもはっきり言って極めて不愉快だ。そして何よりも、今月は数字の面でリオンに大きな遅れをとっている。
さすがに少し表情が歪む。
下から伸ばされる手の平が 慰めのように優しく首筋を辿る。
「そんな顔もするんだ。嫉妬?」
「……ん?カッコ悪いでしょ」
「そうだね 泥臭いのは似合ってないよ」
「……あ~あ 仲良く死んじゃえばいいのにね あの2人」
クスリと笑い 攻撃的な言葉で思い切り毒づいてみる。流れていた会話が 少しだけ止まった。