第5章 square/夢主2人/キャバ嬢/裏
深夜の更に深夜の時間帯。
まず、誰名義で取った部屋なのかもわからないが 男女4人で利用するにしても広過ぎるとの印象だった。タクシーが直接乗り入れたので どこの何と言うホテルかもわからないが それなりの豪華さがある。
仕事の後、皆で軽く呑み 何となくの流れでここに行き着いた訳だが、さも当たり前にこんな所にエスコートされたのだから きっと彼等にとってはこういう展開もただの日常なのだろう。皮肉にそう思うものの、想像以上の夜景と部屋の高い天井には不覚にも目を奪われる。
ほんのり酒の回ったリオンの頭は 部屋に入るなり晴れて行くようだった。
「………わぁ、ステキ」
塵一つない澄んだ窓には 勿体無くて手を触れぬまま 高層階からの絶景を見下ろした。時間が時間だけに街の街灯は少ないが それでも十分すぎる程、時が止まったみたいだった。
「さぁ シャワーでも浴びようカナ」
「ん~疲れた~………」
「水とかないの?喉渇いた」
窓ガラスが綺麗すぎるせいで 夢のような情景は無残にも現実を映してしまう。3人揃って夜景には目もくれていないではないか。
彼等にはこのロマンチックな空間がわからないのかと文句を言いたくなった。
ヒソカは手にしていたジャケットを落とし シャツに手を伸ばしているし、同僚のルナはベッドの上で足を組みスマホいじりだ。肝心のイルミは 冷蔵庫で水分を物色している。
リオンは拗ねた顔で振り返る。瓶入りのミネラルウォーターに口を付けているイルミに近寄り、そっと身体を添わせた。
「いいホテルだね。気に入った」
「そう?取ったのヒソカだけど」
飲むかとばかりに渡される冷たい水は 豪快にもすでに半分がなくなっている。リオンは 舐める程度に水を飲み、じっとイルミを見上げた。
「…どうせならイルミと2人で来たかったなぁ」
「それはまた今度ね」
嘘か真かもわからないよくある台詞に合わせ、上から瓶を抜かれた。
イルミを見つめ 状況を整理する。そろそろ「そんな」頃合いだろう。何度か互いの店を行き来したし こうして仕事を払った場を共有した事もある。きっと ここへ来た時点で先方達も「そのつもり」な筈だ。
リオンはイルミの腰に両腕を回した。うっとり目元を溶かし 下から熱視線を送る。