第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
元々教える気はないのだろう。イルミは自身のスマホをあっさりポケットに隠してしまった。
イルミと別れた後、ユイはザワザワ忙しない周りを見渡した。
今日も昨日となんら変わらず 都会は排気ガスと狭い空。行き交う大人は皆気難しい顔をし、たむろする若者はへらへら緩い笑みを見せている。
それでも天気のせいなのか、ユイの気持ちは晴れやかだった。
「イル兄ー!色々ありがとう!!じゃあね」
くるりと振り返り人混みに溶けてしまうイルミの背中に声を投げた。この都会では自己主張は疎まれるのか、空気の読めない大声はすぐに注目の的になる。振り返るイルミと数秒視線を合わせた後、どちらともなく自らの行く道を進むことになる。
背格好だけではイルミであるのか やっぱりよく分からないが、今はそれもあまり気にならなかった。きっと春からここに来れば イルミとはまた会うことになる、根拠はないが絶対的な自信はあった。
きっとイルミのおかげである。ユイの目には昨日と変わらぬこの街が 少しだけ違って見えていた。
fin