第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
翌日。
「わあ!いいお天気だねー」
台風一過とは本当らしく イルミとともにホテルを出れば外は眩しい晴天だった。暖かい陽ざしと柔らかい風が心地いい、一晩で乾いた白いワンピースがふんわり広がる天候にユイは自然と笑顔になった。
「イル兄 昨日は本当にありがとう。あたし1人じゃどうしたらいいかわかんなかったし助かっちゃった」
「それは良かったね」
「夜もちゃんと寝れたからスッキリしてるし」
「オレも久々に夜ちゃんと寝た気がする」
明るい白昼の中では 隙なくキマるスーツ姿のイルミの方がやや浮いているようにも見える。駅への道すがら ユイはそんな事を考えた。
「あ、そうだ」
「?」
思い出したように言い イルミはやや道を逸れる。顔にはてなマークを見せながら ユイはイルミに着いて行った。
「ここ、…携帯ショップ?」
「そう。ガラケーだけで生活しようなんて春からはさすがに無理があるんじゃないの?」
「そう…?電話とメール出来るし問題ないよ?」
「どうせ電車通学だよね。朝のラッシュと人身事故の多さ、この街に入り組む電車 地下鉄 バス モノレールの大まかな路線と傾向 網羅出来るの?」
「えっ、」
「他人とのやり取りだって今時Eメール使う奴なんか殆どいないよ」
昨日の今日であるし大体の流れは見えてくる。
最新の機器が飾られる店舗内に必然の如く入ることになる。勝手に機種やプロバイダまでを取り決めるイルミの後ろで ユイはぽかんとするしかなかった。
数十分の後、ユイは購入したばかりの白いボディのスマホを見下ろしていた。
「まさかあたしがスマートフォンまで持つことになるとは…。使い方全然わかんないけど…」
「一応は若者の端くれなんだからすぐ覚えるよ」
「これお金どうするの?月々の料金…まさか、イル兄が払うの?」
「機種変更なだけだしオレが出すのは本体代まで。さすがにそこまでは面倒みないよ」