第7章 揺れるびいどろ、恋ノ花模様 * 織田信長
「────美依」
「んっ……!」
俺はそのまま、噛み付くように唇を塞ぐ。
すぐさま舌を差し入れて、中にある柔らかい熱を絡め取ってやった。
ああ、林檎飴の味がするな。
それから、普段は差さない紅の味も。
それらは混ざって、俺の尖った神経に染み込んでいく。
全て美依が悪いのではない。
愛らしいのは長所だし、それに魅せられるのは仕方のない事だとは頭では理解している。
だが、心は思考とは別物だ。
他の男が美依を愛らしく思うのは気に食わない。
そして───………
それに気づけない美依も。
もっと、自分の魅力に自覚を持たねば。
────貴様は、愛らしすぎるのだ
「んっ…んぅ…ぁ……」
次第に瞳を潤ませる美依。
角度を変えるたびに出来る隙間から漏れる甘い吐息が、熱っぽく響いた。
このように外で口づける事、美依は恥ずかしいと思っているのだろうな。
だが…人気のない場所に移動しただけ良いと思え。
俺は人が縦横無尽に行き交う中で、口づけても良かったのだからな?
「……」
「っ…はぁっ…ぁ……」
口内を貪るだけ貪って唇を離すと、美依は息を荒れさせ、濡れた瞳で見つめてきた。
何故口づけられたのか、解らないと言った顔だ。
俺はそのまま、その細い首筋に顔を埋める。
そして、ちゅうっときつく吸い上げたら、美依は肌をビクリと震わせた。
唇を離してみれば、そこには鮮やかな紅い華が咲き…
(……上出来だ)
綺麗に付いた痕に、少しだけ満足する。
だが美依はそうした事に不満のようで、俺に向かって焦った声を上げた。
「ちょっ…信長様……!」
「なんだ」
「っ…そんな所に口づけたら、見えちゃいます!」
「見えてよいのだ、これは"牽制"だからな」
「え……?」
俺が言う意味が解らないのか、美依は少し目を見開く。
この口づけの痕は、"牽制"と"辱め"だ。
他の男に対してと、美依に対して。
その両方に効果的で、そして──……
俺自身の"独占欲"も満たされる。