第6章 エゴイズムな純情戀歌《後編》* 豊臣秀吉
秀吉さんに告白されました。
『お前の事、好きだ』と。
秀吉さんは兄だと、
兄みたいなもんだと、
そう思っていたのに……
『美依……』
あの、欲情した目を忘れられない。
色濃く燃える、榛(はしばみ)色の瞳。
私だけを映して、切なく光っていた。
あの夜にあった、蜜な事件。
流された、確かに流されたけど、
嫌じゃないと思ったのは何故?
私、私───………
秀吉さんのこと、
どう思っているのかな。
「腫れ、引いてきたんじゃない」
「本当?良かった〜」
腕を骨折し、一ヶ月くらい経ったある日。
私を訪ねてくれた家康が、少し安心したように微かに笑みを浮かべた。
『秀吉さんに用があったついで』と言っていたけど、しっかり薬を持参しているあたり、最初から私の事を気にかけてくれていたのだと思う。
家康は本当に素直じゃないな…と思いながらも、その優しさに笑みを隠せないでいれば…
家康は呆れたように溜息をつき、私の額を指でちょんとつついた。
「……何、にやにやしてるの」
「別に、何でもないよ」
「そう。ところで、秀吉さんとはうまくやってる?まぁ、心配なんて必要ないとは思うけど」
「え、えっと…ま、まぁ…ね」
「……なんでしどろもどろなの」
家康に疑惑の目を向けられるが、こればっかりは話せない。
まさか、お風呂場で襲われちゃいました!なんて。
しかもそれに抵抗もしなかったなんて…
恥ずかしくて、誰にも言えるわけがない。
そう、私が怪我をし、世話してくれる秀吉さんと御殿で生活をし始めて間もない頃。
ちょっとしたハプニングがあり、私が湯浴みしている最中に、お風呂場に駆けつけてくれた秀吉さんは…
私に欲情し、理性を飛ばした。
まさかの、秀吉さんに襲われるという事態。
あの時の秀吉さんは、兄ではなく一人の『男』だった。
そして───………
私は気持ち良さに流され、抵抗もせず。
はたまた、秀吉さんの手で気をやる始末。
もちろん、最後までした訳じゃないけど。
私、秀吉さんに襲われたのに、
(何故か、嫌だと思わなかったんだよね…)