第5章 エゴイズムな純情戀歌《前編》* 豊臣秀吉
「美依………」
溢れ出す、
想いが、
愛しさが、
切なさと混じって、
募る心が、
お前を求めて声を上げる。
「────お前の事…好きだ」
きっかけはひょんな事故。
おれのせいで、怪我をさせて、
意気揚々と面倒見ていたのに、
こんな失態を晒して。
それでも好きだ、
大好きだ、お前の事。
お前にとって───………
俺がただの兄貴でも。
その夜、俺と美依はいつも通り、一緒の部屋で眠った。
俺は当然、眠れる訳もなく。
躰も心も高ぶって、目を瞑れば『湯殿での行為』が何度も脳裏に蘇ってきた。
可愛く乱れた美依の顔。
その肌の熱さ、柔らかさ、甘い声。
果てた時の、艶っぽい表情も。
思い出すだけで、火照ってしまい。
隣の褥で美依が眠っている事を思えば、欲を処理する訳にもいかず…
ひたすら長い夜の始まりに、深く溜息を漏らすしかなかったのだった。
エゴイズムな純情戀歌《前編》
ー了ー
*.☪︎┈┈┈┈次回予告┈┈┈┈┈☪︎.*
『私は秀吉さんを、どう思っているのかな』
あの湯殿での一件以来、
秀吉を意識して止まらない美依。
相変わらず甲斐甲斐しく世話を焼く秀吉に
もどかしい気持ちがいっぱいで…
『────私だって、秀吉さんのこと』
兄なんて、もう思えない。
私にもっと…触れてほしい。
次章>>>>
エゴイズムな純情戀歌《後編》