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【イケメン戦国】新篇 燃ゆる華恋の乱☪︎華蝶月伝

第23章 拗れた微熱は指先に溶けて《後編》* 石田三成




美依様と初めてすれ違ってから数日経った。

最近はそのお姿すら見ていない。
どうやら、御殿ではなく安土城の自室に帰っているようだと秀吉様から聞いた。
それはつまり、私とは顔も合わせたくないという事だろう。
そのくらい…美依様を傷つけてしまったのだ。


『理由を言えたら、どんなに』


美依様は私の知らない男と会っていた。
だが、それは私には言えなかった。
理由を言えない事情があったのだ。
それなのに、私は隠れて逢引していると美依様を責め立て……
無理やり理由を吐かせようと、美依様を辱める痕まで付けた。
……泣かれて、当然なのだと思う。

どうしたら仲直りできるだろうか。

まずは謝ることが一番だが、どうやって謝るべきか。
姿すら確認出来ないのに、会って謝るなんて出来るのだろうか。
最近はこんな事しか考えていない。
公務をしていても上の空で……








私の中を締める貴女の割合が、
とても大きな事に、改めて気づくのだ。








「……成」

「はぁ……」

「三成……おい!」

「は、はい!」



突然声を掛けられ、私は急いで俯いた顔を上げる。
そこには、いつの間に目の前に来たのか、家康様が立っていて……
珍しく怒ったように、しかめっ面になっていた。



「家康様、どうなさいました?」

「廊下は前見て歩けって散々秀吉さんに言われてるだろ。なんでぶつかっても気づかないんだよ」

「あ……す、すみません」



(しまった…家康様を怒らせてしまった)

いつもはお優しい家康様が、今日は酷く苛立っているように見える。
私は自分が思ってる以上に重症らしい。
それはつまり『何も手につかない』という事が。
ぶつかっても気づかないなんてよっぽどだ。
何度目か解らないため息をはぁっとつくと、目の前にいる家康様が翡翠の目を細め……
やがてぽつりと、呆れたように言った。



「やっぱり拗れたのか」

「え?」

「美依と。この前の茶屋の一件だろ」

「あ……はい」



全てを見透かしたような言葉に、私はまた俯く。
あの時は家康様も一緒に居たから…
きっとその後、私が美依様を問い詰めたこともお見通しなのだろう。




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