第21章 一世の契り * 帰蝶
ひらり、ひらり
どこからか、桜の花びらが待ってきて。
再度重なり合う体の上に、儚く落ちた。
まるで俺の体にも花が咲いたように。
火照った体が薄紅に染まって、
雪解けた時に愛しさを思う。
お前を愛していると、
今は全身で伝える事が出来るから。
────出来れば、もう少しこのままで
『んっ…帰蝶、さん……』
『また蕩けてきたな、愛らしい』
『帰蝶さん、こそ……』
『うん?』
『すごく、幸せそうな顔ですよ』
『……ああ、それは』
『お前が傍に居てくれるからだ。もう、隠すこともないだろう。────愛している』
伝えた想いが鮮やかに色づく。
幸福など、考えてもこなかった己が……
今はそれを、全身全霊で感じている。
お前の言葉に、温もりに、心に、
今日も酔わされ、明日も溺れて、
そうして命尽きるのも、悪くない。
明けない夜はないのだ。
いつの日も夜明けは訪れて……
その光に包まれる日がやってくる。
真っ白にはなれずとも、
お前が俺の手を引いて連れ出してくれるから……
今世最後の恋情に華を咲かせる。
いつの時代も変わらない……
あの日に見た、桜の花のように。
一世の契り
ー了ー