第20章 君色恋模様《後編》* 真田幸村
俺だけの花嫁を甘く溶かす。
少しのすれ違いも、お前を甘やかすための口実だ。
俺達は、これからもこうしてひとつになる。
なんだかんだ喧嘩もするだろうけど、
また俺達は寄り添って───………
一本の道を、手を繋ぎながら歩いていく。
「なあ…もう少し、したい」
「えっ…さすがに気づかれちゃうよ」
「あんな声上げてたんだぞ、もう手遅れ」
「あっ……!」
純白の白無垢の下で、秘密の交わりを。
俺達は暗い部屋で隠れるように何度も触れ合いながら、またお互いの絆を一層深くした。
美依の指にはまった指輪が、煌りと輝いて……
俺の想いが形になって煌めいたのだと、自惚れるほどに満ち足りたひと時だった。
*****
「本当に綺麗だよ、美依。冗談抜きで掻っ攫いたくなるなー」
「ふふっ、信玄様ありがとうございます」
「信玄様、幸村の前ではその台詞は御法度ですからね」
「解ってるよ、佐助。そこまで空気を読めない訳じゃないから大丈夫だ」
それから数日後の、晴れた日。
私は白無垢の支度を整え、迎えが来るのを部屋で待っていた。
本当に、今日は晴れてよかった。
部屋から見える青い空や紅葉が綺麗で……
私もいよいよ幸村の元に嫁ぐのだと、実感が湧いてくる。
少し重い白無垢も綿帽子も、着ていて心地いい。
幸村がくれた指輪もあるし、気分はすっかりハイテンションである。
「ねえ、美依さん」
すると、今の今まで信玄様と話していた佐助君が、少し遠慮がちに私に尋ねてきた。
「ずっと気になってたんだけど…指輪、そっちの指でいいの?」
「うん、いいの!幸村がはめてくれたんだから」
「うーん、左手の薬指って教えておくんだったな」
佐助君が無表情ながらも若干困ったように言うので、私は思わず苦笑してしまった。
そう、幸村が私に贈ってくれた指輪は、今でも私の"右手"の薬指にはまっている。
何となく自分ではめ直すのは勿体無い気がして、はめてくれたままになっているのだ。
(はめ直すなら、幸村にやってもらいたいな)
それを幸村に説明したら、きっと顔を赤くして焦ってはめ直してくれるのだろう。
その姿を想像するだけで、何だか心があったかくなった。