第19章 君色恋模様《前編》 * 真田幸村
好きになって掻っ攫って、
絶対に一生離さねーと決めた。
可愛いお前が大事だから、
もう二度と離れはしないと。
そして、ようやく『正式に』結ばれる。
その時のお前は綺麗だろうな、
口に出しては言えねーかもしれないけど、
きっと天下一の女になる。
その前のいざこざは……
まあ、差し味みてーなもんだ。
それがいつも通りの俺達の形。
喧嘩して、仲直りして───………
また絆を一層強くする、そんな幸せの前日譚。
*
「美依、届いたぞー」
「えっ、本当に?!」
────初秋のある日
俺が美依の部屋に顔を出すと、美依はびっくりしたように声を上げて立ち上がった。
その姿が可愛らしくて、思わず苦笑してしまう。
まあ、ずっと待ってたんだしな…とそれを思えば美依の行動は当たり前のように思えた。
俺は美依に近寄ると、自然の流れで手を握る。
そして、反対の手で美依の頭を撫で、期待に満ちた顔を見下ろしながら言った。
「隣の部屋に運んだから、見てみるか?」
「うん、見る!」
「おー、じゃあ行くか」
俺が手を引いて歩き出せば、美依は満面の笑みを浮かべて隣を歩く。
こうして並んで歩く事が、これからの俺達を示唆しているようで……俺も思わず頬が緩んでしまった。
俺と美依は数日後に祝言を挙げる。
これまで何度もすれ違い、喧嘩もして、それでも離れられなかった俺達。
そんな俺達もやっと正式に結ばれ、夫婦になる。
ここまではとても険しい道のりだった。
それでも……やっぱり美依とこうして同じ道を歩ける事に幸せを感じる。
(俺の隣は、こいつじゃなきゃ駄目だ)
これほど好きになれる女はいない。
そう思えるのは、後にも先にも美依だけだ。
だから、全力で幸せにしてやりたいと。
辛い思いをさせた分、二人でたくさん幸せになっていきたいって……そう思う。
「それにしても、一時はどうなるかと思ったけど…間に合って良かった」
安心したような、嬉しそうな美依の顔。
それも当然だろう、花嫁には無くてはならない『ある物』が手違いによって到着が遅れていたからだ。
それが今日やっと届いた、頬が緩みまくってしまうのも頷ける。