第18章 鴇色の華に魅せられて * 織田信長
閨で蕩ける貴様は、この上なく愛らしい。
俺の指や舌や声で、くずくずに崩れていく様は、何度見たって心が高ぶるものだ。
────だが、それは貴様も
同様だったのだと今宵知ることになる
いつもは俺に溶かされてばかりの美依。
それが今宵は逆になるなど、露ほども思うまい?
そんな大胆不敵な貴様が現われる。
まあ、たまには────…………
貴様に啼かされるのも、一興だ。
(……美依?)
今は少し肌寒くなってきた中秋。
椛が鮮やかに色付き、今宵もそれを愛でる…という面目で宴が執り行われていた。
壁際で小さく丸くなる美依を見つけたのは、宴も終盤になってからだ。
どこに行ったと思っていたが、気がつけば広間の隅でこれまたこじんまりと小さくなっていた。
俺は美依に近寄ると、その肩を軽く叩く。
すると、気がついた美依が真っ赤になった顔を上げ、ふにゃりと頼りげない笑みを見せた。
「のぶなが、しゃま〜〜」
「……貴様、だいぶ酔っているな」
「酔ってないれすよ〜お酒は、飲みましたけど」
「呂律が回っていない、光秀あたりにだいぶ飲まされたのだろう」
俺の言葉に、美依はふわふわと笑うだけ。
頬は真っ赤に火照り、瞳は潤んで気怠げで。
そのような無防備な姿を晒しておくのは『美依のかれし』としては正直複雑である。
はっきり言って『愛らしい』状態になっているからだ。
(他の男に襲われても文句は言えんな)
味方しか居ない宴でも、あわよくば美依を連れ去ってしまおうと思うかもしれない。
美依は皆に愛されている、良からぬ気を起こす輩がいてもおかしくはない。
だったらそうなる前に手を打たねばなるまい。
俺は美依の小さな体を横抱きにし、ゆっくり立ち上がった。
美依は大人しくされるがままになっていて…これでは本当にかっさらわれても不思議ではない。
すると、俺達の様子に気がついた秀吉が傍に駆け寄ってくる。
そのまま俺と美依を交互に見て、少し怪訝そうに眉を寄せた。