第15章 日華姫ーあの子の誕生日ー * 徳川家康
────夏なんか、大嫌いだった
暑いし、太陽は馬鹿みたいに照りつけるし。
汗はかくし、気持ち悪くなるし。
はっきり言って、毎年夏なんか来なけりゃいいのにと思っていた。
だけど……
夏はあの子が生まれた季節だと知って、俺の中で少しばかり夏への考え方が変わった。
あの子は太陽みたいに眩しい子だから。
光に愛される子だから、きっと夏に生まれてきたのだと、そんな風に思う。
『その日』が来るのが、毎年待ち遠しくて。
どんな風に祝ってやろうか、何をしたら喜ぶのか、それを考えるだけで心が弾む。
夏が大嫌いだったのに、夏に来るその『記念日』がとても大切で大好きな日になった。
……惚れた弱み、ってやつなのかな。
『────家康』
名前を呼ばれるだけで、苦しく焦がれる。
笑顔が見られば、一日幸せだ。
今年もまた来る、大好きな子の誕生日。
今年は……どんな日になるのだろう。
ねぇ、美依?
今年もあんたが生まれた事を祝わせて。
俺なりに精一杯、あんたを喜ばせるから。
だから───………
今年も、俺の隣で、
太陽みたいに笑っていて。