第13章 愛逢月の秘蜜《後編》* 政宗、家康
「蜂蜜…に近い味がする。生薬的な味は全くと言っていいほどしないな」
「確かに柘榴や蜂蜜なんかはそっち系の作用もあると言われてますけど…美依はだいぶ辛そうでしたよね?」
「俺は薬には詳しくねぇが…美依にはだいぶ効いてたように感じるぞ」
「すごい乱れてましたしね、美依」
二人して美依を見下ろす。
どこか幼く見えるあどけない寝顔は、昨夜の色香を纏った美依とは別人のようだ。
そんな美依を見ながら二人が思った事。
それは───………
(次からは俺だけに乱れて欲しい)
媚薬なんか使わずとも、この腕の中で。
気持ち良くよがって、快感に浸る美依が見たい。
俺だけが存分に愛して、たくさんお互い好くなりながら頂点を目指す。
それは三人で躰を重ねた、今以上に幸せに違いない。
でも、そうするためには、まず───………
この赤裸々な想いを伝えないとな。
「今日このまま寝てるのは駄目だよな」
「起きないと、怪しまれるんで」
「そうだな。美依が宴に居なかった事も、俺達が途中で抜けたのも、秀吉や光秀辺りは察してるだろ」
「三人でこんな事したの知られたら、怒られるだけじゃ済まないです」
「だよなー…今のうちに寝顔を堪能しとくか」
「……そう、ですね」
すやすやと安心したように眠る姫は、華開いて水を注げば爛漫に咲き乱れた。
昨夜の事は、三人の秘密。
七夕に起きた、蜜なる秘め事。
本来ならば、忘れなきゃならないのだろう。
でも、忘れられるはずもない。
そのくらい……可愛かったのだから。
もうすぐ、夜が明ける。
蜜事は夜の帷に隠して、太陽が昇ったらもういつも通りだ。
だから、今は……もう少しこのままで。
きちんと想いが伝わったら、今度こそ離しはしない。
政宗と家康は美依を見つめ、愛しげに目を細める。
今起きたら、びっくりするだろうなと。
だがそれは、また少し後の話。
今はこうして、愛しい女を堪能したい。
零れる恋情が、心を朱に染めて───………
愛しい秘蜜の時間が、穏やかに過ぎていったのだった。
愛逢月の秘蜜《後編》
ー了ー
この後、分岐ルートを2~3ページ書く予定です*