第8章 桃色淫書-蜜恋に戯れる想い- * 石田三成
貴女が好きです、
貴女が好きです、
抑えきれない想いは限界を超え、
そろそろ溢れてしまいそうだ。
美依様、貴女は───………
ワ タ シ ノ コ ト ヲ
ド ウ オ モ ッ テ ル……?
「美依様すみません、お手伝いさせてしまって」
「大丈夫だよ、三成君一人じゃ大変だもの」
新春、年が明けたばかりの夜のこと。
私は美依様と一緒に城の書庫に籠りながら、家康様に頼まれた書簡を探していた。
以前私が読んだ事があるもので、家康様が読もうとしていたらしいのだが、私が読んでそのままどこかに置いてしまったらしく…
責任持って探してこいと。
そう言われてしまったので、私は山積みになっている中から必死に探していると言う訳だ。
そして、そんな私を気遣い、美依様も一緒に探してくれている。
本当にこの方は優しい御姫様だ。
それに…こうして二人きりになれるのは、私にとってはこの上ない喜びでもある。
(……今日も可愛らしいな、美依様)
探す振りをして、こっそり姿を目で追う。
しなやかな身体、艶やかな黒い髪。
くるくるとよく動く瞳は黒曜石のようで、桜色の唇も、真っ白な肌も…
本当に私を惹き付けて離さない。
加えて、素直で頑張り屋で、真っ直ぐな気質。
そんな美依様を心に想い始めてから、随分と時が経った。
最初は戸惑ったけれど、抗えない気持ちは膨らんで、もうこの方はすっかり私の心に住み着いている。
そんな美依様と、今は二人きり。
これが心踊る以外に何があるのだろうか。
「あ、三成君!これじゃない?」
と、その時。
山積みになった本の下の方から、美依様が一冊引っ張り出そうと、しゃがみこんだ。
大人の胸の高さほどまで積み上がった本の山。
そんな中から引っ張り出そうとすれば…
当然、上の方は崩れてくるわけで。
「……っ」
それらがぐらっと、美依様の方に傾いたのが解った瞬間。
私は咄嗟に動いてしまい、美依様を庇うように両腕で包み込んでいた。