第1章 継子
“奴ら”…を一括りにして“私たち”が呼んでいる名は、鬼。
殺せる方法は二つ。
鬼の頸を斬り落とすか、太陽(日)の光に当てるか。
それぞれ鬼に名前はあるのだろうけど、いちいち問うこともなく“私たち”が刀で頸を落としてしまうから、ただ鬼と呼んでいる。
刀、と言っても、通常の玉鋼で作られた刃物では、鬼の頸を落とし、滅することはできない。
怪我を負わすことはできても、通常の刃物では鬼の怪我は回復してしまうからだ。
そこで作られた刃物が、“日輪刀”。
持ち主によって刀身の色が変わるため、“色変わりの刀”とも呼ばれている。
太陽に一番近い山から採れた玉鋼で作られるためか、その日輪刀で鬼の頸を斬ると怪我は回復することなく、その体は灰のように崩れて消滅する。
日の光に当たると同様、血も、骨も残らない。
そして、日輪刀は、ごく普通の一般人は手にすることができない。
特別な訓練を受け、呼吸という技を使いこなし、試験に合格した者だけがその刀を握ることができる。
その日輪刀を手にして鬼を狩っているのが、私も師範も所属している“鬼殺隊”だ。
鬼殺隊には強さを示す十の階級があり、一番下の階級は“癸(みずのと)”、一番上の階級が“甲(きのえ)”。
そして、その十の階級をも上回る強さを持って昇格できるのが、“柱”。
現在は九名の柱がいるらしく、私の師範もその中に含まれている。
師範は音の呼吸の使い手で、“音柱”と呼ばれている。
その鬼殺隊を統べる、最高位でとてつもなく偉い“お館様”という方がいるらしいけれど……鬼殺隊の詳しいことについては、私自身もまだまだ勉強中だ。
「傷だらけ…。帰ったらまた須磨さんのお説教かなぁ」
長々と語ってしまったけれど、最初からずっと怪我の痛みは我慢したまま。
師範の少し後ろを歩きながら、青痣や、細かい切り傷が目立つ手足を見て、思わずため息をこぼした。
あまりにも傷だらけで帰宅すれば、師範のお嫁さんの須磨さんに「嫁入り前なんだから自分を大事にして!!」と手当てされながら耳にたこができそうなくらいお説教される。
「須磨も心配してんだよ。お前が毎日毎日、殴り合いの喧嘩したあとみてぇな体で帰るもんだから」
なら少しは手加減してくれ頼むから。と密かに胸の内で悪態をついた。