第1章 さよならの代わりに
あとは自分で調べるべきだ。
きっとハンジもそう思っているのだろう。
想い人が最後に残した花…。
その花言葉は、なんなんだろうか——。
ネリネについて思いを巡らせていたそんな俺に。
「じゃあ、私は行くよ。リヴァイも今日は休みなよ。」
「あぁ。」
ハンジは踵を返し、食堂から出て行った。
水を取りに来たはずなのに、花をみて帰っていった。
ーあいつなりに、俺を励まそうとしたのか。
そんな不器用なあいつなりの心遣いに助けられた。
ネリネの花瓶を胸に抱え、食堂から出た。
その足は、書庫へ進めていた。
花についての本が何冊か置いてあるとリリーに聞いていた。
書庫の中には、様々な本が所蔵されている。
長年手に取られていなく埃が被った本もある中で、その本は埃一つ付いていなかった。
それは、だれかが最近読んでいた印だった。
手に取ってすぐにわかったリリーが愛読していた本だと。
表紙には、色とりどりの花の絵が描かれている。
目次のページをめくり、ネリネの文字を探す。
文字をみつけると、手を走らせた。
早くリリーの想いを知りたい——その気持ちが俺の手の速度を速めていく。
該当のページへ辿り着くと、一瞬、息をするのを忘れるくらい目の前の文字が俺を惹きつけてやまなかった。
リリー…おまえらしいな。
ふっ、と口に笑みを浮かべると同時に本を閉じた。