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Emotional Reliable

第4章 噂のカノジョ


 

(やっぱりいつ来ても緊張する...)

ややぴりっとした面持ちで汐は立っていた。

私立鮫柄学園。今日は部活の用事で来ていた。


ちょうど1時間ほど前、汐は部長の桐谷あずみに話があると声をかけられた。
「みーこ、次の連休に鮫柄と合同練習するから」
「連休中のいつですか?」
「さあ」
「まだ未定なんですか?」
「合同練習を決めるのは部長の仕事。けど、打ち合わせをするのはマネージャーの仕事!とゆーわけで、みーこ!いってらっしゃい!」

あずみさんはいつもいきなりだし強引なんだから...というちょっとした不満を胸に押し込んで、汐は高い塀に囲まれた鮫柄の敷地内に踏み入る。

何度か来たことがあるから室内プールまでの道のりはわかる。
女子一人で男子校を歩いていると嫌でも視線を集めてしまう。
なるべく生徒の目につかないように早足で入口へ向かった。


汐はプールの様子がよく見える見学用の部屋に通された。
ほどなくして汐を呼ぶ威勢のいい声が聞こえた。

「やあ榊宮くん!さっきあずみから連絡があったんだ!合同練習の打ち合わせに榊宮くんがくるとな!」
わははと豪快に笑う鮫柄水泳部部長の御子柴を見ていたらふと思い出す。


(そういえばあずみさんと御子柴部長は地元が一緒だったっけ...)

汐は小学校は私立に通いスピラノ中学に入学すると同時に今住んでるところに引っ越したため地元が一緒、という感覚がよくわからなかった。

なんかいいな、そういうの...と心のなかで微笑みながら合同練習の詳細を決めていった。


話もひと段落ついたところで、ガラスで隔たれたプールに目をやる。
大勢の部員たちが今日も練習に励んでいる。


(さすが鮫柄...春休みに合同練習したときより確実に強くなってる...)

強豪校を支える敏腕マネージャーの目が光る。
そして表情を変えずに思う。


(うちの女の子たちのしなやかな筋肉には負けるけど、さすが強豪校...すごい鍛えられた筋肉...)

汐はいわゆる筋肉フェチだった。ただしあまりそれを表に出さないため、知る人はほとんどいない。


軽いときめきを覚えながらぼんやりと鮫柄の練習風景を眺めていた。
そのとき、ひときわ目立つ赤髪の背の高い部員が目についた。


(え、あの人...)

ガラスに近づいた。それと同時にその赤髪がゆっくりとガラスのほうを見た。
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