第4章 変わりゆく関係、別れ
ザラの悲痛な叫びに、リヴァイは思わずきつく目を閉じた。
その脳裏を、今まで、リヴァイを慕い、共に戦い、そして死んでいった仲間たちの姿が、ありありと浮かんでは消えていった。
リヴァイは目を開くと、ほとんど衝動に任せてザラを胸へと抱き寄せた。
力を失ったザラの体は、引き寄せられるがままにリヴァイの腕の中へと収まった。
リヴァイの腕の中で、ザラは声を上げて泣いた。
堪えることなど出来なかった。
アーヴィンとの思い出が、胸に浮かんでは、消えて行った。
「悲しくないと言ったな。寂しくないと言ったな」
ザラの悲痛な泣き声を胸に、リヴァイは言った。
「悲しいに決まってるだろう。寂しいに、決まってるだろう。それだけ深く、お前は奴を、想っていたんだ。その相手を、失ったんだ。悲しくて何が悪い。寂しくて何が悪い。当然のことだ。人として、当然のことだ」
リヴァイの言葉の一つ一つが、確かな形となって、ザラの胸に突き刺さった。
思い出さえあれば、悲しくないと───寂しくないと、本気で思っていた。
アーヴィンが、死ぬまでは。
アーヴィンを失って、初めてザラは気が付いた。
思い出なんかでは、生きていけない。
とてもではないが、生きていけない。
悲しい。寂しい。
会いたい。
会ってもう一度、話がしたい。
『うう…あああ…』
声を上げて、ザラは泣いた。
リヴァイの胸に縋って、わんわん泣いた。
リヴァイは黙って、強くザラを抱き締めていた。
道行く兵士たちが何事かと凝視してくるのもそのままに、二人はそうして、しばらくの間身を寄せていた。
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