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【リヴァイ】君がため

第4章 変わりゆく関係、別れ



「噂に聞いたぞザラ、お前、立体機動の腕前が凄いんだって?」


がやがやと混雑している夜の食堂で数日ぶりに会った幼馴染みは、顔を合わせるなり開口一番、嬉しそうにそう言った。


『凄い…?や、まあ、得意ではあるけど…』

「昔から運動神経だけはよかったもんなあ、どうせ上手いんだろうと思ったよ。俺の地道な努力なんざ、簡単に追い抜かされるんだろうなと思ってた」

『そうかなあ?アーヴィンもかなり腕が立つって聞いたよ私。へへ、なんか嬉しいね、お母さん達が生きてたら、きっと故郷の誇りだって喜んでくれたよね』


無邪気にザラが笑う。
その笑顔にアーヴィンはふと切なくなって、思わず言葉に詰まった。


故郷での日々が脳裏によみがえる。
穏やかな自然、優しい家族。
いつも美しくあった故郷の風景。


すべてを失った今、ザラに残されたものがアーヴィンだけであるように、また、アーヴィンの世界のすべても、ザラだけであった。


「…今日は、調整日だったのか」


これ以上感傷に浸るのはよそうと話題を変える。
ザラが笑顔で頷いた。


『うん、今日は一日休んでた。あー、早くアーヴィンと立体機動訓練受けたいなあ、アーヴィンが空飛んでるとこ早く見たいよ』


連日訓練続きだった新兵のほとんどは、今日は休暇の予定となっていた。
簡単な兵舎の掃除と食事の配膳だけに業務は留まり、他の時間は基本、何をしててもいいのだった。


「さて、そろそろ俺は行くかな。お前ももう出るか?」

アーヴィンが立ち上がり、ザラも頷いて立ち上がった。




食堂を出たところで、アーヴィンがふとザラの右手の甲から血が出ていることに気が付いた。


「なんだ、そこ、怪我してる。どこかにぶつけたか?」


ザラの手を取って、アーヴィンは傷口をまじまじと見つめた。

暗がりの中で、食堂の戸口の灯りに照らされたザラの白い肌と赤い血が対比となって映えて見える。

ザラは特に思い当たる節のない怪我だったので、不思議そうに首を傾げた。


『…さあ、なんだろう。どこで怪我したのかな、わかんないや』

「わかんないってお前…大事にしろよ。兵士にとって、体は何よりも大事だぞ」

『はは、わかってるよ。気をつける、気をつける』


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