第3章 生意気な新兵
「…お前には何度も驚かされるな」
険しかったリヴァイの表情が、ふと和らいだ。
「先のことはわからん。だが、自由の翼を名乗るにふさわしい兵士になれる素質は大いにある」
とんだ愚図だと思っていたのに、とリヴァイは思った。
実際に蓋を開けてみれば、にわかには信じ難いほどの、強大な力の持ち主だった。
「…お前、なんなんだ」
素直で明るい、不器用でよく空回る真面目な新兵。
リヴァイに継ぐ立体機動の実力の持ち主。
『なんなんだ、とは…』
リヴァイの質問の真意が掴めず、探るような表情をする。
リヴァイは優しく微笑んだ。
「───面白いやつだな、お前は」
ザラの腰元へ手で弄んでいたブレードを戻すと、リヴァイはザラの肩に手を置き、励めよ、とだけ言い残して兵舎の方へと戻ろうとした。
『あっ…あの!』
その背中へ、ザラが声を張り上げた。
リヴァイの足が止まり、こちらを振り返る。
『ありがとうございました。あの、よろしければ…兵長さえよろしければ、また、ご指導いただいてもよろしいですか』
真剣な面持ちでザラが言う。
いい気概だ、とリヴァイは思った。
「いいだろう。だが、やるなら容赦はしないぞ」
『は…はい!勿論です!』
嬉しそうにザラが微笑む。
立ち去るリヴァイへと敬礼をし、その背中を見送りながら、なんて頼もしい、優しいお人なのだろうとザラは思った。
始めこそ恐れ慄いていたが、こんな新兵にまで気を配り、指導をなさるなんて、兵士の鑑のようなお人ではないか。
その好意がザラに特別に向けられたものだとは露知らず、ザラはリヴァイの行いに感銘を受けていた。
どうにかして、彼の期待に応えたいと思った。
リヴァイの教えを胸中で何度も何度も思い出す。
彼についていこうと、漠然と、しかし確固たる自信に溢れて、ザラは思うのだった。
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