第3章 揺れる記憶
「少し前の型だが使えるパソコンもある。1日座ってるだけでは退屈だろう、リヴァイも別にかまわないだろう?」
「…まぁ、かまわない…だが、は苗字も名前も特徴的だ。仕事をするなら偽名を使った方がいい。それだけは気をつけてくれよ?」
「は、はい…ありがとうございます」
仕事をするのは勿論かまわない。
身を守るためとはいえ、1日中オフィスで何もすることがないのはある意味苦痛だろう。
何かに集中することができれば時間を潰すのも苦ではないだろうと了承したリヴァイだったが、は苗字も名前も珍しい。本名で仕事はしないようにだけ条件を出すと、リヴァイは置き物になってしまっていたパソコンを起動し、使えるようにしてやった。
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朝2人で出勤し、オフィス内では別々の仕事をし、夜には2人で帰る。
そんな生活はなんの問題も起こることなく順調に軌道にのった。
はマルチリンガルに何カ国語も操れるため、仕事は偽名を使った無名のフリーランスから始めたにも関わらず、すぐに選べる程声がかかるようになった。
元恋人の存在を忘れたわけではない。
自分の行方を追っているのか、もうすっぱり未練無く諦めてくれたのかは不明だ。
そのため恐怖心がないわけではないが、今は1人ではない。
朝と夜はリヴァイと一緒。
オフィス内ではリヴァイかエルヴィン、必ずどちらかが側にいてくれる。
こんなに心強いことはない。
はリヴァイ達との生活が順調に進めば進む程、元恋人のことを思い出す時間がどんどん減っていった。