第3章 揺れる記憶
ー翌日ー
リヴァイがオフィスの扉を開けると、エルヴィンはすでに出勤しており、パソコンに向かっていた。
「おはようリヴァイ…昨日の“急用”とやらはもう大丈夫なのか?」
「………」
エルヴィンはパソコンの画面に目を向けたまま問いかける。
リヴァイはどうしたものかと少し考えたが、事情が事情だ。もしの身に危険が生じるような事が起これば飛んで戻らなければならない上に下手したら警察沙汰にもなりかねない。
と住んでいた男が今どんな境遇にあるかなど、想像するなど不可能だ。
潔く諦めてくれてれば問題ないのが、しばらくは警戒が必要だろう。
現にリヴァイはには外に出ないように言いつけてきたのだ。
万が一の事も頭に入れると、エルヴィンには話しておくべきだろう。
「その事だが…エルヴィン、今少しいいか?」
「??」
リヴァイはそう判断すると、一昨日の夜から昨日までの出来事をエルヴィンに報告をした。
「………そんな事があったのか…いや、信じていない訳では無いが…信じがたい話だ。」
「…まぁ、そうだろうよ。だが本当に起こった事だ。まだ先の事は分からないが、分からないからこそお前に話した。それは分かってくれるな?」
「あ、あぁ…それはもちろん。」
交際相手の暴力から逃げてきた女をリヴァイが助けたなど、ドラマの中の話のようであまり現実味が湧かなかったが、リヴァイはそんな嘘をつくような人間ではない事は長い付き合いで十分に分かっている。
エルヴィンは静かに頷いた。
「そしたら色々と心配が尽きないな…リヴァイのマンションで1人にしておくのも正直気がきではないんじゃないのかい?」
「……まぁな。」
エルヴィンの言う通り、いくら外に出るなと言った所で心配が解消される訳ではなかった。
実際にマンションから出て、池袋のオフィスに向かってどんどんとの距離が離れると、それに比例するかの如く膨れ上がる不安。
自分でも自分が信じられない程の心配ぶりだった。