第3章 親愛なる人へ(夢主サイド)
──夢主サイド──
“親愛なる人に花を贈る日”
人に想いを伝えるには、何かの切っ掛けも必要だ。
「だっ、団長!今日はしっ親愛なる人に花を贈る日なので!」
また1人赤面した女兵士がやってきた。
「ありがとう」
感謝とともに微笑むと彼女たちは涙ぐんで去っていくのだ。
「ありがたい事だがな」
苦笑いもしたくなるだろう。
両手いっぱいの花束が歩く度にポロポロと落ちていくし、それを私が後ろについて拾っていくのだ。私の両腕も甘い香りで溢れる。
"ずっと慕っております" "お傍で働けたらどんなに光栄か"
花より甘い言葉が書き連ねているメッセージカードが目に止まる。
花束よりこっちが目的でしょう?そう心の中で悪態をつく私に、申し訳なさそうな視線を彼は送るのだ。
団長室のソファーに置くと、バサバサッと音を立てて花束の山が崩れ落ちた。
「すまないな、手伝わせて」
「いえ、それも仕事ですから」
団長のお傍で補佐するのが私の仕事であり、その事を誇りに思っているし、嫉妬の対象になっているのも分かっている。
1番近くで働いていると、彼の凄さも冷酷なようで情があるのも良くわかるのだ。現に団長は私に謝りつつも、束からこぼれ落ちた花々を拾ってソファーに置く。皆の気持ちがこもっている事を良くご存知だ。
団長室に花瓶は1つ。当然これらの花は水にさせず、その美しい命を縮める事になるのだが。
「綺麗ですね」
色とりどり趣向を凝らした花束は無機質な団長室に華を与えてくれた。