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進撃の巨人SS詰め合わせ(作者まりも)

第3章 親愛なる人へ(夢主サイド)


「やっぱり女性は花が好きか」
「まぁ」

団長がクローゼットの中から、青を基調とした花束を取り出した。
きっとこれより前にわざわざ団長室に渡しに来た兵士がいたのだろう。一介の兵士が呼ばれてもいないのに団長室に…とは考えにくいが一体誰が?

クローゼットの扉を閉め、両手で花束を握りしめた彼の視線は私に注がれる。

「貰ってくれないか?今日は親愛なる人に花を贈る日だろう?」

いつもの威風堂々とした態度ではなく、少し照れた笑顔を向けた彼の花束は緑系の色合いに包まれた青。調査兵団のマントに身を包んだ団長を彷彿とさせる色合いだ。可愛い花束は金色のリボンで上品に結ばれていた。

「跪くのはまだ早いからしないよ」

数日前、団長と共に行ったシーナ出張の帰り、跪いて花束と共にプロポーズをしていた青年がいたっけ。

「私に…勿体ない…ありがとうございます…」

受け取ると甘さの中にもキリッと引き締まる香りに包まれる。

「実は私も」

引き出しの中にこっそりと忍ばせておいた、3輪の百合の花を取り出した。渡せる機会があれば渡そう、そう思っていたから。

「私からも団長へ」

額への口付けで感謝の意を表されたら先程の嫉妬も吹っ飛んだ。
忙しい業務の中で、あの日団長と想いが通じたのは幻だったんじゃないかって思っていたから。

リボンを解き小ぶりの花瓶に緑、青、白の花を飾るも、私が贈った百合の花が1本だけ花瓶から溢れた。周囲を見渡し花瓶がわりになりそうな物を探すが見当たらない。

「ここへ」

示された場所は彼の胸ポケット。
ブーケブートニアの儀式を彷彿とさせ変に意識してしまうが、これは違うこれは違う変な意味は無いと言い聞かせ胸元に飾った。

「この前シーナで見た光景を思い出すな」

プロポーズを受けた女の子は男性の胸元に花束から花を抜いて差していた。

「そう…ですね」

せっかく意識しないようにしていたのに、彼の言葉で誤魔化しはきかなくなった。花とおなじ碧い瞳が近付くと唇が触れる。

「こんな日でもないと、気の利いた事も出来ない」

笑う彼を前に何も言えず、飛び跳ねたい気持ちを抑えて金色のリボンを握りしめる事だけしか出来なかった。

―END―
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