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進撃の巨人SS詰め合わせ(作者まりも)

第6章 良いお年を【エルヴィン】


――話は4日前に遡る。

「今年の年越しは馬車になりそうだな」
不本意だが仕事だから致し方ない・・。そんな顔をされたら何も言えない。
「え、私たちと年越しパーティしないの!?酷いよぉ!」
声に出して抗議するのはハンジ分隊長だけだったが、その場にいたリヴァイ兵長、ミケ分隊長も同じ気持ちだっただろう。
長らく生き残っているメンバーで年を越しこの世にいる喜びを少しだけでも喜べる・・幹部たちにとって大晦日はそういう日だった。背負っている命の数を忘れる日は決して来ないが、殆どの兵士が故郷に帰るこの日だけは自らの命に感謝をする。
「来年は色々な計画を実行に移す大きな年になるからな。新年は貴族たちが祝賀会を開くそうだ。調査兵団の欠席はありえない」
言葉にいつものような力強さがなく、傍に立つ私を気まずそうに見る事から申し訳なくは思っているようだ。
「彼女なんてわざわざ帰郷を取りやめたのに・・可哀相だよ」
ハンジの目線が自分に注がれている。
「それは・・」
「私は大丈夫ですから」
言い淀む団長を見て咄嗟に口をはさんだ。
「団長、私は大丈夫です。ハンジ分隊長たちと楽しく過ごしますから!団長はお仕事頑張ってください」
努めて高い目の声をだし明るく振る舞う自分を前に、同情的な空気が漂う。
「・・すまない」
軽く頭を垂れる団長に対して怒るわけがない。団長として背負う物が大きく、仕事が第一でありそれが人類の為。自分が好きになった相手はそんな相手なのだ。
しかし、正直落胆は隠せない。
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