第1章 初日
「疲れましたけど、早く部に慣れたいです」
「ここの練習はちっとハードだからよ、あんまりとばし過ぎるとあとがもたないぜ。気をつけろよ」
くたくたになりながらもようやく何とか初日の練習を終える萌。そこへ乾がつかつかとやって来た。
「夢野、良かったら俺が作ったドリンク、『疲労回復汁』があるが飲んでみるか?」
「はい、ありがとうございます」
先輩の申し出を断ってはいけないと思い、萌は快く回復汁の注がれたコップを受け取った。
「う゛」
顔に近付けるともの凄いにおいがコップから漂ってきたが、口を付けてしまったので後にはひけない。
「…あ、おい、それは…」
「おわ…駄目だっ、それを飲んだら…!」
気付いた周りの部員が声を上げて止めようとする。しかし萌はひと息にコップの中身を飲み干していた。
「ごちそうさまでした」
飲む前の状態と変わらない萌を見て周囲がどよめく。
「うそだ、生きてる!?」
「だ、大丈夫なのか?お前」
大石や桃城が心配そうに萌の顔を覗き込んだ。
「…はい、まあ」
においは凄かったが飲めない程ではない。けろりとしている萌に菊丸が驚いて詰め寄ってきた。
「うっそ~すっげ!乾汁効かない奴が不二の他にもいるんだあー」
「菊丸の分もあるぞ」
「うえ~~!!俺いらない、疲れてないってば」
乾にボトルを差し出され、菊丸は腕をぶんぶんと振って拒否している。
「…結構おいしかったのに」
「おいしい!?お前、ヘン!」
萌がぽそりと感想を漏らすと、それを聞いていた菊丸に再び驚かれてしまった。
騒ぎの輪の中にいた桃城のほうへリョーマがやって来た。
「桃先輩。今日、行っときます?」
「そうだな。腹減ったし行こうぜ越前」
彼らのやり取りをぼーっと見ていた萌は、ふとリョーマと目が合ってしまう。