第1章 初日
青学に入学した夢野萌は、以前から決めていた念願のテニス部に入部し、実力を測るための部内の対抗試合を勝ち上がりミクスドの選手に選ばれる。
今年から試験的に導入されたミクスドは、まだ未知数だが盛り上がる可能性を秘めたやりがいのある競技だ。元々テニスの経験がありレギュラー入りを目標としていた萌にとっては、とても喜ばしい結果となった。
「入部したての1年がレギュラー?」
「ミクスドとはいえちょっと生意気よね、経験者らしいし」
当然部内の先輩や周りの女子から陰口を散々叩かれ、萌は居心地の悪い思いを強いられてしまう。
その中で唯一の救いは、陰口の輪に入らない来葉瑠羽の存在だった。彼女は萌と同じくミクスドに選ばれた女子テニス部3年のレギュラー部員だ。いつも懸命に練習をしている優しくて綺麗な人であった。
ミクスドの枠は各校1枠だが、怪我などの事態に備えて青学では2ペアを選出することになっていた。1ペアは実質補欠枠になるが、なるべく両ペアとも試合に出させて経験を積ませようという方針のようだ。
これからどんなペアを組んでどんな対戦相手と戦うのか、期待に胸が弾んでくる。
そしていよいよ、ミクスドのための練習が開始される。萌は女子テニス部での下積み生活もそこそこに、男子テニス部のほうで活動することになった。男テニは女テニと違い洗練された雰囲気がありさすがに緊張してくる。自己紹介を済ませ早速練習に参加した。
「夢野さん、一緒に柔軟やろう?」
先輩である瑠羽と共に準備運動と基礎体力作りのメニューをこなした後、レギュラーとの合同練習に加わった。ダブルスの試合形式に沿った練習で、萌は次々に替わるペアで力を出し尽くすつもりで挑む。やはり女子と違って明らかに皆上手かった。集中していないとすぐ置いていかれそうだ。
さすがに男子の練習はちょっとキツいなー…
休憩中、萌は乱れた息をなかなか整えられずに思った。
「夢野だっけか?どうだ?調子は」
すると孤独な萌に気を遣ったのか、桃城が話しかけてくれた。