第121章 記憶の欠片<肆>
あの日から三日後。
汐は鉄火場から刀が打ち終わったと連絡があり、工房を訪れていた。
「大変お待たせして申し訳ありません。ようやく完成致しました」
汐は完成したばかりの刀を手に取った。心なしか、前よりも吸い付く様に手になじむような気がした。
「握り心地と重さはいかがでしょうか?」
「うん、いい感じ。というより、前よりもしっくりくるような気がするわ」
汐はその感触に驚きつつも嬉しそうに笑った。
刀は相も変わらず、角度を変える度に色とりどりに変化していく。
それを見ていた鉄火場は、徐に口を開いた。
「汐殿。以前に私はその刀の色についていろいろ調べてみると申しましたが、覚えていらっしゃいますか?」
「えっと、最初にあたしに刀を持ってきてくれた時だっけ?鱗滝さんの所に」
「はい。あれからいろいろと調べてみたのですが、やはり後から色が変わる刀は過去には存在しなかったそうです。すみません」
鉄火場は申し訳なさそうに言った。
「別に謝らなくてもいいわ。色が変わるからって、刀が弱くなるわけでもないし。それにあたし、結構気に入ってるのよ?見てて飽きないしね」
悪戯っぽく笑って言う汐に、鉄火場はほっと胸をなでおろした。