第15章 幕間その弐
星空の音楽会
汐と炭治郎が無事に帰還し、禰豆子も目覚めてから七日後。
「あれ?禰豆子がいない・・・」
夜の帳が降り、月明かりだけが照らす夜。炭治郎は寝床に禰豆子の姿がないことに気が付いた。
それと同時に外から聞こえてくる、透き通るような歌声。
「この声は、汐だな。もしかして、また二人で一緒にいるのか?」
炭治郎はそのまま外に出て、歌声が聞こえるほうへ歩みを進めた。
そこには、岩に座って歌を披露する汐と、それに合わせて小刻みに体を揺らす禰豆子の姿があった。
あの日から二人はすっかり仲良しになり、夜になればこうして二人でいることが増えた。
特に彼女の歌を禰豆子はとても気に入ったらしく、歌をせがむようになったくらいだ。
ひとしきり歌い終えると、汐は炭治郎の姿に気づく。彼もまた禰豆子を挟むように隣に座ると、一面の星空を見つめた。
「禰豆子、すっかり汐の歌が好きになったみたいだな」
「そうみたい。もう何回歌ったか忘れちゃったわよ」
汐はそういってゆったりとほほ笑んだ。
「その歌。確か汐が村でよく歌っていたわらべ歌だったか?」
「よく覚えてるね。そうだよ。元々は【ワダツミヒメ】を鎮めるための歌が変化した、なんて言われているけど」
「ワダツミヒメ?」
炭治郎が首をかしげると、汐は昔のことを思い出すように遠い目をした。
「あたしの村に代々伝わるおとぎ話。海を守る女神のお話だよ」
そう言って汐は、おもむろに語りだした。