第119章 記憶の欠片<弐>
遠くから金属がぶつかり合うような、激しい音が聞こえてきた。
「何?何の音?」
「さっきの人がもう・・・、こっちです!」
少年は汐と炭治郎を連れて茂みの中を移動し、その場所まで案内してくれた。
そこで見たものは、無一郎が目にもとまらぬ速さで刀を振る姿だった。
汐と炭治郎は目を見開き、思わず身を固くする。
だが、二人が釘付けになったのは彼だけではなかった。
「あれが・・・、俺の祖先が作った戦闘用絡繰人形――」
――縁壱零式です。
そこにあったのは、一人の男性の姿をした絡繰人形だった。
顔の半分は破損しているものの、しっかりした造りの胴体に、阿修羅像のような六本の腕。
そしてその耳には、炭治郎の物と酷似した耳飾りをつけていた。
「縁壱・・・零式・・・」
汐は絡繰人形の名を呟いたとき、奇妙な既視感を感じた。
(縁壱・・・、よりいち・・・?なんだろう・・・その名前、聞き覚えがあるような・・・)
「・・・よりいち・・・様・・・?」
その言葉を最後に、汐を強烈な眩暈と深い悲しみが襲うのだった。