第118章 記憶の欠片<壱>
(見た目よりも筋肉が少ないし、皮下脂肪の方が多いみたいだった・・・)
「君、もしかして・・・女?」
無一郎が汐に尋ねるが、汐は答えず彼を鋭い目で睨みつけた。
「こ・・・、こいつっ・・・!!」
汐が怒りに満ちた低い声でそう言うと、背後からこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。
それが誰か確かめる間もなく汐と無一郎の間に滑り込むと、躊躇いもなく無一郎の胸ぐらを乱暴に掴んだ。
そこには、緑と黒の市松模様の羽織に、霧雲杉の箱を背負った、汐の想い人――、
――竈門炭治郎の姿があった。
思わぬ事に汐は息をのみながら、その逞しい背中を見つめると、炭治郎の口から言葉が漏れた。
「汐に・・・、何をした?」
その声は汐が今まで聞いたことない程低く、怒りで震えていた。