第116章 刀鍛冶の里<参>
(確か、このあたりだったわよね。ああもう!この里温泉多すぎよ!!もっとわかりやすくしてほしいわ!!)
頭の中で悪態をつきながら、汐は先ほどの温泉のある場所へ向かっていた。
いろいろ置きすぎて混乱していたとはいえ、大事なものを忘れてしまった不甲斐なさに、憤りを感じていた。
そのせいかは最中ではないが、汐は前から歩いてくる人影に気づかずに、そのまま思い切りぶつかってしまった。
「わっ!!」
「っ!!」
思いのほか勢いが強く、汐はそのまま尻餅をつき、相手も小さくうめき声を上げた。
「いたたたっ、あ、ごめんなさい!急いでいてつい・・・」
汐は尻をさすりながら、謝罪の言葉を口にして顔を上げた。
「えっ・・・!!」
その相手を目にして、汐は思わず息をのんだ。そこにいたのは、六尺ほどの高い身長に、側面が刈られた特徴的な髪形の少年。
――不死川玄弥だった。