第116章 刀鍛冶の里<参>
汐が鉄火場と話し込んでいる間に、炭治郎もこの里を訪れていた。
あれから彼の元には日輪刀が届かず、代わりに届いていたのは、恨み辛みが込められた呪いの手紙だった。
焦る炭治郎に、蝶屋敷の三人娘たちは、鋼鐵塚と直接話をするために刀鍛冶の里へ行ってみてはどうかと提案した。
その里に汐が来ているとは露知らず、里長の鉄珍に挨拶をした後は、曇天の空の下を歩いていた。
(ここが刀鍛冶の里。あちこちから温泉の匂いがするなぁ。体力が万全じゃないのも、鼻が利きにくい原因かな)
あれからなかなか体力が戻らなかった炭治郎は、鉄珍に里の温泉に好きなだけ入っていいと許可をもらっていた。
しかし、いざ温泉に入ろうとしても、たくさんある上に効能も様々で、どれに入っていいのか決めかねていた。
すると、背中に背負った箱の中で、禰豆子が起きたのかカリカリと音がした。
「禰豆子、お前も温泉に入りたいのか?」
炭治郎が尋ねると、禰豆子はそうだというように先程よりも強く箱を引っ掻いた。
(この天気なら禰豆子を外に出しても大丈夫だろう)
炭治郎はすぐ傍に温泉を見つけると、禰豆子を箱の中から出し、自身も服を脱いで手ぬぐいを下半身に巻き付けた。
そしていざ、温泉に入ろうとした炭治郎の足が、その場で止まった。
彼の視線の先には、真っ青な髪を揺らし、一糸まとわぬ姿で表情を固まらせた、見覚えのありすぎる少女。
――大海原汐が、そこにいた。