第107章 変わりゆくもの<肆>
ある日の夜更け、人の気配がしない路地裏で蠢く、一つの影があった。
背は小さいが、横幅は背丈よりも大きく、動くたびに水のような音がした。
それの足元に落ちていたのは、人間だったものの残骸。そしてそれの口元と両手は、真っ赤な血で濡れていた。
「・・・ア゛・・・・」
それは濁ったうめき声をあげると、月明かりが差し込む空を見上げて、たどたどしく呟いた。
「ハ・・・ナ・・・ガ・・・・、サ・・・ク・・・・、ワダ・・・ツミ・・・・ウタ・・・」
その声は宵闇に吸い込まれて、瞬く間に消えていった。