第13章 二つの刃<参>
その夜更け、鱗滝は寝室の扉をそっと開け、その光景に面越しに笑みを浮かべる。
そこには禰豆子を中心に、左側に炭治郎が、右側に汐が川の字の様に並んで眠っている。二人ともそれぞれ禰豆子の手を握っていた。
鬼を憎み、その殺意におぼれそうになった汐が、鬼である禰豆子を心から受け入れたことに、鱗滝はうれしさを隠しきれない。それもこれも、炭治郎と禰豆子の存在が大きいだろう。
「玄海・・・看ているか?」
鱗滝は扉を閉め、窓越しから見える月を見上げた。
「今日お前の娘が、鬼殺の剣士になったぞ・・・」
鱗滝の脳裏に、あの日のことがよみがえる。昔、彼らが鬼狩りをしていたあの日のことだ。
――なあ、左近次。もしも俺たちにガキができたらよォ、ぜひとも会わせてやりてえな。いい刺激にもなるだろう。男女ならなおさらな
――いきなり何を言っているんだお前は
――いいじゃねえか、これぐらい。そしてその成長を俺たちで見届けるんだ。お前と俺の、二人でさ
「言い出した約束を自分から破り先に逝きおって・・・馬鹿者が・・・!」
鱗滝の小さな精いっぱいの罵声が、静かな夜に少しだけ響いた。