第104章 変わり行くもの<壱>
「いいえ、大丈夫です。連れて行ってください、我妻さん」
汐の言葉に善逸は頷くと、彼女の手を取って部屋を出た。
すると、汐の為に本を持ってきていたすみと、廊下でばったりとあった。
「あ、善逸さん。それに汐さんも。どこに行くのですか?」
「屋敷の裏山に行こうと思っているんだ。あ、勿論、無理はさせないよ。病み上がりの女の子に、山登りをさせるつもりはないんだ。ただ・・・」
口ごもる善逸を、汐は怪訝そうな表情で眺め、すみは何かを察したようにうなずいた。
「わかりました。しのぶ様やアオイさんには、私から伝えておきます。ですが、汐さんはまだ歩けるようになったばかりですから、くれぐれも無理はさせないでくださいね」
「勿論だよ、ありがとう。じゃあ、行こうか、汐ちゃん」
善逸の言葉に汐は頷くと、すみに頭を下げて善逸と共に歩きだした。そんな二人の背中を、すみは祈るような想いで見つめていた。