第101章 決着<弐>
再び気を失った伊之助にあたふたしていると、
「いやあああああ!!!!」
何処からか女性の金切り声が飛んできて、汐達の耳を激しく穿った。
「今度は何!?」
「あっちの方からだ。行ってみよう!」
顔をしかめる汐に、炭治郎は禰豆子に運ぶように頼むと、禰豆子は頷き二人を抱えて再び歩き出した。
「死なないでぇ!死なないでくださぁぁい、天元様あ~~~~!!!」
汐達から少し離れた所で、ぐったりと背中を瓦礫に預けた宇髄の前で、須磨は涙と鼻水を垂れ流しながら泣き叫んだ。
「せっかく生き残ったのに!!せっかく勝ったのに!!やだあ、やだあ!!」
須磨は宇髄に縋りつきながら泣きわめき、まきをは青ざめ、雛鶴は目に涙をためて俯いていた。
「鬼の毒なんてどうしたらいいんですか!解毒剤が効かないよォ!!ひどいです神様、ひどい!!」
頭を振り、涙と鼻水を飛ばしながら泣きわめく須磨に、宇髄は自分の死期を悟ったのかゆっくりと口を開いた。
「最期に、言い残すことがある・・・。俺は今までの人生「天元様死なせたら、あたしもう神様に手を合わせません!!」
宇髄の言葉を遮り、須磨の甲高い声が響き渡った。
「絶対に許さないですから!」
「ちょっと黙んなさいよ!天元様が喋ってるでしょうが!!」
尚も泣き喚く須磨にしびれを切らしたまきをが、髪を引っ張りながら怒鳴りつけた。
そんな二人に雛鶴は、どちらも静かにするように諫めるが効果がなかった。
「口に石詰めてやる、このバカ女!!」
「うわあああ!!まきをさんがいじめるうううう!!!」
大口を開けて泣きわめく須磨の口に、まきをは瓦礫を手に一杯握りしめて突っ込んだ。
「オ゛エ゛ッ、ホントに石入れたァ!!」
「バカ!!だまれ!!」
「止めなさい!!」
「ギャアアア!!!」
妻たちが騒ぎ立てる中、宇髄はひとり、この状況に絶望しながら天を仰いだ。
(嘘だろ?何も言い残せず死ぬのか俺。毒で舌も回らなくなってきたんだが、どうしてくれんだ。言い残せる余裕あったのに、マジかよ)
いよいよ本当にまずいと思ったその時、宇髄と妻たちの間に滑り込む小さな影があった。視線を移せばそこには小さな姿に戻った禰豆子がおり、挨拶をするかのように右手を上げていた。