第88章 蠢く脅威<壱>
炭治郎の働きぶりは、店の中でもかなりの評判になっていた。元々彼が家事全般が得意だったのもあり、その容量の良さと人柄の良さが幸いしての事だった。
今日も彼は、大量の洗濯物を畳み、荷物を運び、掃除もてきぱきとこなす。
そんな中、どこからか透き通るような歌声が聴こえてきて、炭治郎は思わず足を止めた。否、足を止めたのは炭治郎だけではなかった。
その歌声に店の者の殆どが思わず足を止める程、汐の奏でる歌声は評判になっていた。
しかも、彼女は善逸程ではないが耳がよいため、二回ほど聞けば三味線ならほぼ完ぺきに弾くことができた。(ただ、琴はあまり得意ではなかったのか、指導が何度か入っていたが)
思わぬ二人の出現に、楼主と女将はほくほく顔になるのだった。