第87章 鬼潜む花街<肆>
隊服に身を包んだ宇髄は、屋根の上から店の様子をうかがっていた。
(今日も異常なし)
店の様子と鬼の気配を気取りながら、宇髄は目を細めて口を引き結んだ。
(やっぱり尻尾を出さねぇぜ。嫌な感じはするが、鬼の気配ははっきりしねぇ。まるで煙に巻かれているようだ)
元忍びの彼やくのいちである妻たちの捜査網をかいくぐる程の鬼ならば、少なくとも十二鬼月であることは間違いない。
(気配の隠し方の巧さ・・・地味さ。もしやここに巣食っている鬼・・・上弦の鬼か?)
上弦の鬼。四か月前に煉獄が戦い命を落とした、無惨の血がかなり濃い強さの鬼達。
だとしたら、相当な戦いになることは言うまでもないだろう。
(ド派手な“殺り合い”になるかもな)
宇髄は目を一層鋭くさせながら、まだ見ぬ敵への警戒心を一層高めた。