第77章 誇り高き者へ<肆>
「恋柱様・・・」
その様子を甘露寺と見ていた使用人は困惑したように甘露寺を見上げたが、彼女は静かに下がるように言うとすっと汐の前に立った。
「あなたの気持ちはよく分かったわ。でも、今のあなたを継子として認めるわけにはいきません」
甘露寺の冷静な声に、汐は絶望を宿した眼で彼女を見上げた。しかし甘露寺はすっと持っていた傘を汐の上に差すとにっこりとほほ笑んだ。
「まずは身体をしっかり治すこと。基本的なことがしっかりできていない人に、稽古を付けさせるわけにはいかないわ。それができたらあなたを、私の正式な継子として認めます」
甘露寺の優しい言葉が汐の耳から染みわたり、止まっていた涙が再びあふれ出した。涙と泥にまみれた顔を、甘露寺は小さな手ぬぐいで優しく拭く。
「だからその時は、改めてよろしくね。一緒に強くなりましょう!」
汐は我慢できずに甘露寺に縋りつくと、そのまま大声をあげて泣いた。激しくしゃくりあげる背中をなでられているうちに、意識が遠のいていくのだった。
その後、気を失った汐は甘露寺によって蝶屋敷へ運び込まれ、目を覚ました汐は、これ以上ない程しのぶにこってりと絞られるのだった。