第75章 誇り高き者へ<弐>
「はっ!!」
目を見開いた汐は、そのまま体を起こそうとした。が、先ほど斬られた肩と腹部に痛みを感じて顔を歪ませた。
「汐、大丈夫か?」
傍にいた炭治郎が心配そうに顔を覗き込むが、汐は身体を突き刺すような気配を感じて痛みをこらえながら起き上がった。
「あたしは平気。それよりも、何?この気配。あの夢を見せる鬼は倒したんじゃなかったの?」
「ああ、あいつは確かに倒した。けれど、別な鬼が襲ってきたんだ。あいつ、上弦の参って書いてあった」
「上弦って・・・そんな、嘘でしょ?なんでそんなやつがこんなところに来るのよ!?」
「俺だってわからないよ!でも今、煉獄さんが戦って――」
炭治郎が言葉をつづけようとしたその時、汐の背後で爆発音のようなものが響いた。顔を向ければ煉獄ともう一人。猗窩座という鬼だった。
彼は煉獄の技を受け流し、時折受け止めつつそれ以上の力で打ち返してくる。しかし煉獄も負けじと猗窩座の攻撃をいなし、受け止め、返していった。
「今まで殺してきた柱たちに、炎はいなかったな。そして、俺の誘いに頷く者もいなかった」
そんな激闘にかかわらず、猗窩座はずっと煉獄に語り掛けていた。
「何故だろうな?同じく武の道を極める者として理解しかねる。選ばれた者しか鬼にはなれないというのに。素晴らしき才能を持つ者が衰えていく。俺はつらい、耐えられない。死んでくれ杏寿郎、若く強いまま!」
――破壊殺・空式――
猗窩座はそのまま空中で拳を放つと、その空気が砲弾のように煉獄に向かって飛んでいった。
――肆ノ型――
――盛炎のうねり
しかし煉獄は自分の周りに剣技を放ち、その空気の砲弾を全て撃ち落とした。その速さと威力に煉獄は目を見開き、そして冷静に分析した。