第73章 狂気の目覚め<肆>
汐の衝撃波と煉獄の剛腕から生み出される弐つの技が、鬼の肉壁を吹き飛ばし、それは壁を貫きはるか遠くまで届いた。
その光景に汐は思わず口を開け、煉獄すらも目を見開き口を大きく開けて笑った。
「これは、凄まじい威力だな!流石の俺もここまでは想定していなかった!」
「あたしもよ。なんか、うん。もう何も考えないようにしよう」
あまりの光景に汐は考えることをあきらめ、煉獄も考察をやめて刀を再び構えなおした、その時だった。
――ギャアアアアアアアアアア!!!
何処からかすさまじい声が上がり、突然列車が激しく揺れ出した。身体が浮き上がるほどの衝撃に汐は必死に座席にしがみつく。
(断末魔の声!炭治郎がやったんだわ・・・!でも、こいつ、頸を斬られてのたうち回っているんだ・・・!)
列車が大きく脈打ち、ぐらりと傾く中。汐は必死に身を乗り出すと煉獄に耳を塞ぐように言った。
ウタカタ 伍ノ旋律
爆砕歌!!!
汐は反対側に向かって爆砕歌を放ち、その衝撃で列車が横転するのを回避させようとした。だが、僅かに勢いが足りず、脱線が回避するには不十分だった。
「伏せろ!」
煉獄の鋭い声が飛び、汐は言われた通り床に伏せる。その上を煉獄はすさまじい動きで駆け回り、激しい斬撃を入れていく。
そして列車が再び大きく傾く瞬間。煉獄は汐の腕を強く引くと、己の腕の中に閉じ込め頭を強く抑えた。
鼓膜が破れそうなほどの轟音が響き渡り、汐は反射的に煉獄の羽織を握りしめ、その衝撃に耐えんと歯を食いしばった。