第51章 ワダツミの子<参>
「炭治郎!?」
今しがた無意識に名を呼んだ相手が扉の向こうにいる。汐は慌てて扉に駆け寄りすぐに開けた。
そこには汐と同じく入院着に着替えた炭治郎が、少し不安を宿した眼でこちらを見ていた。
「なんであんたが・・・っていうか、どうしてここが分かったの?」
「このお屋敷で働いている、えっと、確かなほちゃん・・・だったかな。その人に聞いたんだ。汐がここにいるって・・・っ!!」
そこまで言った炭治郎の顔が突如苦痛に歪む。汐は慌てて炭治郎を引っ張り、ベッドに座らせた。
「ちょっと大丈夫!?あんただって軽くない怪我してるんだから無理してるんじゃないわよ」
「ごめん、ありがとう。でもどうしてもお前に会っておきたかったんだ」
炭治郎はそう言って隣に座った汐の眼を見つめた。澄み切った瞳が汐を静かに映す。
「うん、やっぱり悩んでいる匂いがする。汐、お前自分のせいで絹さんや村の人たちが殺されたって思っていないか?」
心の中を見透かされた言葉に、汐の肩が大きく跳ねる。そんな汐を見て炭治郎は「やっぱりな」と言いたげな顔をした。