第50章 ワダツミの子<弐>(一部閲覧注意表現あり)
一方そのころ――
個室を与えられた汐は、処置を受けた後ベッドに横たわりながら先ほどのことを思い出していた。
(あたしが、本物のワダツミの子。人や鬼に影響を与える声を持つもの)
耀哉は汐の声は鬼殺隊にとって大きな力となると言ったが、もしそうならば炭治郎や禰豆子をあんな危険な目に遭わせることはなかったんじゃないか。
いや、それ以前に、鬼舞辻は自分の力を恐れているとも言った。だとすれば、村が襲われ絹が連れ去られて殺された理由に辻褄が合う。
(村が滅んだのは、みんなが殺されたのは、あたしのせい?)
考えたくはないのに、次々と恐ろしい考えが浮かんでは汐の心を侵食していく。
(あたしがいなければ、みんなは死ぬことはなかった。あたしのせいで、あたしがこんな力を持っていたせいで・・・)
仲間もろくに守れず、大勢の人間を殺した。そんな罪悪感が汐の心を締め付け、鈍く痛んだ。
(どうしよう・・・!あたし、どうしたらいいの・・・?炭治郎ッ・・・!!)
頭の中が真っ白になり息も苦しくなり、無意識に心の中で炭治郎の名を呼んだその時だった。
「汐、そこにいるのか?」
汐の耳に、今一番会いたい人の声が優しく届いた。