第6章 幕間
青髪
そこは、一部の者しか知らないどこかの場所のある屋敷。淡く内部を照らすのは、雲に隠れたおぼろ月。
「報告は以上で御座います」
月明かりと影を両肩にまといながら、青年冨岡義勇は落ち着いた口調でそう告げた。
「・・・そうか」
漆黒の髪を風に揺らし、鬼殺隊当主産屋敷耀哉は短く答えた。
義勇が報告した内容とは、つい先日の事。とある漁村で起こった鬼による襲撃事件。そしてその村に住む元・海柱、大海原玄海の鬼化、その弟子による討伐の事である。
「悲しいことだ。元とはいえ、柱から鬼が出てしまった・・・」
耀哉は悲しげな表情を浮かべた。表情が見えずとも、義勇もその感情を感じ取り目を伏せる。その脳裏に浮かんだのは、汐ともう一人のある少年だった。
2人とも鬼に大切なものを奪われている。そして、自分も・・・
「ところで義勇。彼を討ち倒した弟子『大海原汐』は、どんな子だったかな?」
不意に話を振られ、義勇は大きく肩を震わせる。このような厳かな場所で物思いにふけるなど、あってはならないことなのに。
だが義勇はすぐに冷静さを取り戻し、淡々と答えた。