第43章 絆<参>
糸が汐の体に食い込む寸前、一瞬だが空気を斬るような鋭い音がした。その瞬間、汐の周りに爆発的な空気の渦が生じ、累の糸を吹き飛ばした。
「なっ!?」
これには累も思わず驚きの声が漏れる。そしてその衝撃は波状となってあたり一面を薙ぎ、行き場を失った糸があちこちを刻んで傷跡を残した。
爆発の名残でもうもうと土煙が上がる中、累は呆然と汐達がいた方向を見つめていた。
(なんだ・・・?何が起こった?糸を切られた?いや、違う。吹き飛ばされた。とてつもなく大きな力で)
爆発物を持っていた様子はなく、刀を振るった様子もない。それ以前に、汐は左手を累に砕かれており、刀を握ることすら不可能のはずだ。
なら、いったいどうやってあの爆発を起こした?
土煙が収まり、視界が回復してくると、そこには炭治郎を庇うように立つ汐の姿があった。
爆発の影響か、あちこちが擦り切れ血を流しているものの、彼女の鋭い眼は累を捕らえたまま動かなかった。
「炭治郎」
汐は後ろにいる炭治郎に声をかける。その声色は、とても穏やかなものだった。
「あたし、やっとわかったの。自分のやるべきことが。それを気づかせてくれた、あんた達には本当に感謝しているわ」
「何を、何を言っているんだ?汐」
まるで遺言にもとれる言葉を紡ぐ汐に、炭治郎の眼が不安に揺れた。それを見ないようにしながら、汐は右手で折れた刀を握る。
「だから、今まで本当にありがとう。あたし、あんたと出会えてよかった。あたし、あんたの事――、最高の相棒だって思ってるから。だから・・・あたしの事を忘れないでね」
そして小さく鼻を鳴らし、侮蔑のこもった眼で累を見据えた。
「あんた、累って言ったよね?あんたにも感謝してる。自分の役割がようやくわかったのよ」
――そう。家族の絆は決して切れない。だから、二人の間には何人たりとも入ってはいけない。だから
「邪魔者は消えるわ。但し、邪魔者(おまえ)も一緒にだ!!」
その言葉を放った瞬間、汐は前に飛び出した。大きく息を吸い、呼吸を整える。