第42章 絆<弐>
(なんで・・・!?刃が通らない・・・!?)
汐が状況を理解する間もなく、横から衝撃が襲う。吹き飛ばされた汐は、地面に付したまま日輪刀を探した。
少し先に刀身は真っ二つに放ったがまだ刃は残っている。痛む腕を叱責しながら、汐は柄に手を伸ばした。
だが
汐が刀に手が届く前に、その手の甲を累が思い切り踏みつけた。骨が砕ける鈍い音があたりに響く。
「ぎぃああああああああああああああああああああ!!!!」
汐の口から、耳をつんざくような絶叫が響き渡る。もがきながら必死で足をどかそうとするが、まるで植え付けられたかのように足は動かない。
「汐ーーーッッ!!」
炭治郎が汐の下に向かおうとするが、累は糸を張り巡らせ、それを阻止する。
痛みのあまりせき込みだす汐を、累は冷たい眼で見降ろした。そして足を放し、再び汐の髪の毛を掴んで無理やり立たせると、ぞっとするような低い声で言った。
「邪魔なんだよ、お前。家族の絆すらない、何の役にも立たない塵屑が。塵は大人しく死んでいろ」
その言葉に汐の瞳が大きく揺れる。言葉が彼女の心を殴りつけ、滅茶苦茶に引き裂かれていく。
そんな汐の腹に、累は思い切り足を叩き込んだ。体が後方に吹き飛び、土煙を上げて飛んでいく。そのあとを、炭治郎が慌てて追った。
「残念だったね。僕の体は僕の操るどんな糸より硬いんだ。糸すら切れないお前達に、頸を斬るなんて到底無理だよ」
土煙の上がる方角を見ながら、累は嘲るように言った。